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なぜ、いま中台のトップが会談をするのか?

台湾の馬英九総統と中国の習近平国家主席が7日、シンガポールで会談すると発表された。世界各国でこのニュースが報道され、中台関係の新たな幕開けを予感させている。

中華民国と中華人民共和国

台湾において、台湾人は中華人民共和国のことを「大陸」と呼んでいる。これはどういうことかというと、台湾も中華民国という正式名があり、略すと同じ中国のためだ。
大陸と台湾の関係は複雑だが、現在は両国とも「ひとつの中国を目指す」という見解に立っている。

つまり、大陸側は、台湾を省として、「台湾省」と認識しており、さらに台湾側は、中華人民共和国の領土は、本来は中華民国の領土であると、認識している。
お互いにとって、それぞれ異なる見解だが、「ひとつの中国を目指す」という点では同じだ。
これを九二共識という。(お互いが違う視点に立ってひとつの中国を主張しているという点を【お互いが認識する】という、まことに大人なコンセンサス)
今回の会合では、この点の話し合いが行われるのかどうか、今後の中台関係がどうなっていくのか、を占う上でも全世界が注目している。
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▲動向に注目が集まっている馬英九台湾総統

台湾は8年ぶりの政権交代が確実

一方、台湾の政権与党である国民党は8年ぶりに政権の座から落ちて、現在野党である民進党が政権の座に着くだろうというのが大方の見方だ。
台湾在住の我々スタッフの見解によると、「大陸との関係を緊密化しすぎた現在の国民党政府は台湾人から嫌われています。台湾では独立の意識も昔から根強くありますからね」
昨年の地方選挙では、昔から台湾独立の気風が強い地域では民進党が全勝した。「ひとつの中国でなくていい、台湾は台湾だ」という勢力だ。

昨年の立法院占拠(大陸と結んだ条約の内容を巡り、学生達が一斉反発。一部の大学生が台湾の立法院を占拠した。馬英九政権は学生達と話し合うことで穏便に解決)の余韻はまだ国民の中にあり、来年1月の総統選挙では、民進党首の蔡英文(女性)が総統になるといわれている。
では、なぜ、間もなく総統選挙が行われるというのに、この時期に首脳会談を行うのだろう。共産党政府の狙いはなんだろうか?
英ノッティンガム大学中国政策研究所の台湾在住研究員のJ・マイケル・コール氏は首脳会談について、「台湾ではなく中国が働き掛けたように思える」と指摘。「中国は民進党が躍進するとみられている総統・立法委員選を前に揺さぶりを掛けようと思ったのではないか。国民党は危機に陥っている」と述べている。
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▲来年、総統になるのが確実視されている蔡英文氏

大陸側の思惑は?

新総統候補の蔡英文にとってのアキレス腱は、やはり大陸との関係だろう。共産党政府とどのように渡り合うのか、微妙なバランスを要求される台湾外交を担えるのか、その手腕は期待と不安でいうと、やや不安が勝っているのが現状だ。
やはり、本音として民進党は、台湾は台湾で独立独歩でいきたいのだが、大陸との関係を抜きにして台湾経済については語れない現状、現在の外交路線を踏襲する必要性がある。

しかし、国民党政府と蜜月の関係にある共産党中国政府は、台湾内部の政権交代と同時に手の平を返すような反応をする可能性もある。

これを一番懸念しているのは、台湾経済界のエリート層、また大陸からの投資で潤っている不動産業界、観光業界などに従事する一般層にとっても同じだ。大陸に頼り切ってる台湾経済にとって非常に大きな痛手だ。
勝利が確実視されている蔡英文だが、まだまだ油断はできない。

これは、外交の常套手段だ。対立する国の勢いの弱い派閥の味方をする。すると対立国は永遠に内部抗争に明け暮れるだろう。今回の会合により大陸側は、総統就任する前から蔡英文の首根っこを抑える意図も読み取れる。台湾内部に対して揺さぶりをかけるという目的ならば、今回の会談は成功不成功に関わらず、一定の効果をあげられるだろう。